ドライアイの症状は、「目が渇く」だけでなく、「目がかすむ」、「まぶしい」、「目が疲れる」、「目が痛い」、「目がゴロゴロする」、「目が赤い」、「涙が出る」、「目ヤニがでる」など様々です。
涙には、目の表面に広がって崩れない性質がありますが、その性質が失われ、崩れやすくなり、目の不快感や見えにくさを生じる病気がドライアイです。日本で2200万人もの患者さんがいるといわれ、さらに増加しつつあります。
ドライアイの危険因子として、加齢(加齢で涙の量や性質が低下)、女性、ライフスタイル(長時間画面を見る)、生活環境(低湿度、エアコン下、送風)、コンタクトレンズ装用、喫煙、飲み薬(涙の分泌を減らす作用のある飲み薬)、目薬(防腐剤など)、涙の油を作るマイボーム腺の病気、全身の病気(涙腺が免疫の作用で傷つくシェーグレン症候群や関節リウマチなどの膠原病)などがあります。
ドライアイの治療には、涙の不足成分を補う目薬、目の炎症を抑える目薬などで改善を目指します。画面を見る作業やコンタクトレンズの装用を減らしたり、エアコンを調整したり、加湿器を使うことも効果があります。
アレルギー性結膜炎は目に起きる色々なアレルギー疾患の総称です。アレルギーの素因(花粉やハウスダストなど)があり、結膜の炎症と掻痒感、眼がゴロゴロする(異物感)、めやに、涙が出るなど自覚症状がある際に診断されます。
季節性アレルギー性結膜炎:花粉によって引き起こされるものを花粉性結膜炎といい、その代表がスギ花粉性結膜炎です。季節により花粉の種類は異なり、春ではスギやヒノキ、初夏ではカモガヤやオオアワガエリ、秋ではブタクサやヨモギが代表的です。また、鼻炎の症状の合併が高率にみられます。
通年性アレルギー性結膜炎:季節あるいは気候の変化により良くなったり悪くなったりして、1年を通じて自覚症状があるものを指します。ダニやハウスダストが原因であることが多いです。
アトピー性角結膜炎:アトピー性皮膚炎により顔面や眼瞼に皮膚病変があり、結膜炎は通年性で慢性的な痒みやめやにが出現します。
春季カタル:幼少期の男の子に多くみられる重症のアレルギー性結膜炎で、ハウスダストやダニが原因となることが多いです。典型的には春になるたびに再発し、秋や冬に症状が治まることが多く、成人になるにつれて症状は出なくなっていきます。
巨大乳頭結膜炎:コンタクトレンズや眼科手術の際に使用した糸など、異物による刺激による結膜炎です。
アレルギー性結膜炎は薬による治療が中心です。抗アレルギー薬や、重症度によりステロイドの目薬を使用します。また、春季カタルなどの重症なタイプには免疫抑制剤による目薬を使用します。また、花粉に対して防御メガネの使用や、ハウスダストの場合は寝具を清潔に保つなどの対策をすることで予防することができます。
コンタクトレンズ装用人口は全国で1,500万~1,800万人ともいわれ、国民の10人に1人がコンタクトレンズを装用していると推測されています。それに伴いコンタクトレンズによる眼障害が急増し、コンタクトレンズ装用者の10人に1人に眼障害が生じていると推測されています。その背景にはケア方法が簡便になったことやコンタクトレンズ量販店の安売り販売、そしてインターネット販売の普及などがあります。医師の処方なしでコンタクトレンズを販売していることが少なくありません。
コンタクトレンズには大きく分けて、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズの2種類があり、ソフトコンタクトレンズの使用者が、全装用者の約7割を占めています。ソフトコンタクトレンズでは1日使い捨て、1週間使い捨て、2週間使い捨てといった、いわゆる「使い捨てソフトコンタクトレンズ」が登場し、装用者も増えています。
ハードコンタクトレンズの場合、目に異物感があると本人はすぐに気付いて外すので、障害が起こっても重症化しにくい傾向にあります。一方、薄くて装用感のよいソフトコンタクトレンズの場合は、障害が起こっていることに気付きにくく、異物感や痛みを感じたときにはすでに症状が悪化しているケースが多くみられます。コンタクトレンズの使用状況を調べると、レンズケアがちゃんと行われていない症例、コンタクトレンズの使用期間や定期検査間隔も正しく守られていない症例が見られます。安全にコンタクトレンズを使用するためには、適正なレンズケア、正しい使用方法、眼科での定期検査がとても必要です。
緑内障とは、目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経という器官に障害が起こり、視野(見える範囲)が狭くなる病気のことです。症状は、少しずつ見える範囲が狭くなっていきます。しかし、日常生活では、両眼で見ていますし、多くの場合、病気の進行は緩やかなので、初期は視野障害があってもまったく自覚しないことがほとんどです。
緑内障は中高年の方に起こる代表的な病気のひとつです。症状がない場合でも、定期的に眼科検診を受けることをおすすめします。
緑内障の治療は眼圧を下げることです。ひとたび障害されてしまった視神経は、残念ながら回復することはありません。また、どんなに手を尽くしても進行を止められない緑内障もあります。治療の目的は進行を止める、または遅らせることであり、回復させるものではありません。治療方法としては、薬物療法・レーザー治療・手術があります。
白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気です。原因として多いのが加齢によるもので、早い人では40代から、80代では100%の人で白内障を発症しています。その他の原因として、先天的なもの、外傷、アトピーによるもの、薬剤や放射線によるもの、そして他の目の病気に続いて起こるものなどがあります。水晶体が濁り始めると、水晶体で光が散乱するため、霞んだり、物が二重に見えたり、まぶしく見えるなどの症状が出現し、進行すれば視力が低下し、眼鏡でも矯正できなくなります。
ごく初期の白内障は点眼薬で進行を遅らせることができる場合もありますが、濁った水晶体をもとに戻すことはできません。進行した白内障に対しては、濁った水晶体を手術で取り除き、眼内レンズを挿入する方法が一般的に行われます。
加齢黄斑変性は、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、見ようとするところが見えにくくなる病気です。人口の高齢化と生活の欧米化により近年著しく増加しており、失明原因の第4位となっています。50歳以上の人の約1%にみられ、高齢になるほど多くみられます。比較的最近まで治療法がなかったのですが、最近いくつかの治療法が新たに開発されて、多くの患者さんで視力の維持や改善が得られるようになってきました。
加齢黄斑変性の症状には、ものがゆがんで見える変視症、真ん中が見えなくなる中心暗点、視力低下などがあります。
治療法には、硝子体内注射、光線力学的療法などがあります。
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経障害とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、我が国では成人の失明原因の上位に位置します。
網膜は眼底にある薄い神経の膜で、ものを見るために重要な役割をしています。網膜には光や色を感じる神経細胞が敷きつめられ、無数の細かい血管が張り巡らされています。血糖が高い状態が長く続くと、網膜の細い血管は少しずつ損傷を受け、変形したりつまったりします。血管がつまると網膜の隅々まで酸素が行き渡らなくなり、網膜が酸欠状態に陥り、その結果として新しい血管(新生血管)を生やして酸素不足を補おうとします。新生血管はもろいために容易に出血を起こします。また、出血すると網膜にかさぶたのような膜(増殖組織)が張ってきて、これが原因で網膜剥離を起こすことがあります。糖尿病網膜症は、糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症するといわれていますが、かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、まだ見えるから大丈夫という自己判断は危険です。糖尿病の人は目の症状がなくても定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けるようにしましょう。
糖尿病網膜症の治療には網膜光凝固術(レーザー)、硝子体手術などがあります。網膜光凝固術にはレーザーが用いられ、通常は通院で行います。網膜光凝固術は主に網膜の酸素不足を解消し、新生血管の発生を予防したり、すでに出現してしまった新生血管を減らしたりすることを目的として行います。レーザー治療で網膜症の進行を予防できなかった場合や、すでに網膜症が進行して網膜剥離や硝子体出血が起こった場合に対して硝子体手術が施行されます。
VDT症候群は、パソコンや携帯テレビなどのディスプレイ(VDTビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)を使った長時間の作業により、目や身体や心に影響がでる病気で、別名<IT眼症>とも呼ばれています。1日の連続作業時間が長くなるほど、目に関する訴えが多くみられます。物がかすんでみえる、目が重い、目が痛い、目が疲れる、目が乾く、まぶしい、涙がしょっちゅうでる、目が赤くなるなどの他、ひどくなると気分が悪くなったり、頭痛がしたり、吐き気がすることがあります。
また首や肩のこり、腰痛、腕の痛みや手のしびれ、などの症状がでてきます。
治療は目の疲れをやわらげ、目にうるおいを与える点眼薬などの処方が行われます。
ディスプレイの画面と目の距離は40cm以上あけ、視線がやや下向きになる角度におき、椅子に深く腰をかけて背もたれを十分に当て、足の裏側全体が床に接するように座りましょう。